シングルマザーとして頑張っている方々にとって、手当は重要なサポートです。
けれど、一般の方からすると「手当をもらいすぎ!」、「ずるい!」と感じるかもしれません。
この記事では、シングルマザーが受けられる手当の実情とその背景について、解説します。
シングルマザーが受けられる手当の基本
シングルマザーが受けられる手当は、子供の生活を支えるために重要な支援です。
これらの手当は、シングルマザーが子育てに専念できるように設けられています。
と思うかもしれません。
けれど、手当の受給には一定の条件があり、誰でも簡単に受け取れるわけではないのですね。
受けられる主な手当について、具体的に見ていきましょう。
児童扶養手当
児童扶養手当は、シングルマザーが子供を育てるための基本的な手当です。
所得に応じて支給額が決まり、子供の数や年齢によっても異なります。この手当は、子供が18歳になるまで(一定の条件下では20歳まで)受け取ることができます。
もらえる金額は以下の通りです。
子供の数 | 全部支給額 | 一部支給額 |
---|---|---|
1人目 | 45,500円 | 45,490円~10,740円 (所得に応じて10円刻み) |
2人目 | 10,750円 | 5,380円から10,740円 (所得に応じて10円刻み) |
3人目以降(1人につき) | 6,450円 | 3,230円から6,440円 (所得に応じて10円刻み) |
児童扶養手当制度の概要(PDF/306KB)
2人、3人が1人目の倍になる訳ではないんですね。
子供が多ければ多いほど、一人当たりの支給額は少なるかたちです。
さらに、児童扶養手当が満額がもらえる年収のボーダーラインはかなり厳しめです。
子供が1名の場合
⇒前年の年収160万円(手取り月収:約13万円)
子供が2名の場合
⇒前年の年収215万7千円(手取り月収:約18万円)
子供が3名の場合
⇒前年の年収270万円(手取り月収:約22万円)
大半のシングルマザーは満額もらうことは困難なので、
どのくらいの年収にすべきか記事をまとめたほどです。
母子家庭の住宅手当
母子家庭が住まいを確保するための支援として、自治体によっては、家賃の一部を補助してくれる制度があります。
もらえる金額としては月額5,000円から15,000円程度です。
ただし、所得制限がありますし、そもそも実施していない自治体もあります。
医療費助成制度
子供の医療費が家計に大きな負担となることを避けるため、医療費の一部を助成してくれる制度があります。
支給対象者は母子(父子)家庭で、0歳〜18歳に到達して最初の3月31日までの間の年齢の子供が対象です。
支給金額は自治体によって異なりますが、自己負担額の一部となります。
医療費助成制度には所得制限があり、この額を越えていると制度を利用できません。
子供の人数 | 母子(父子)家庭の所得 | |
---|---|---|
0人 | 192万円 | |
1人 | 230万円 | |
2人 | 268万円 | |
3人以上 | 1人増えるごとに38万円が加算される |
自立支援訓練給付金
雇用保険制度の教育訓練給付指定講座を受講するひとり親家庭の父または母に対して、受講料の一部が支給されます。
対象
- 20歳未満の子を養育している人
- 児童扶養手当受給中か同様の所得水準にある人
- 過去に受給していない人
支給額は受講料の60パーセント(上限20万円)から、教育訓練給付金の支給額を差し引いた額となります。
そのほかのシングルマザーが受けれる手当/制度一覧
他にもシングルマザーが受けれる手当や支援制度があります。
手当/制度 | 説明 |
---|---|
高等職業訓練促進給付金 | 高等教育を受ける際の支援金です。特定の職業訓練校に通う場合に支給されます。 |
保育料負担軽減制度 | 保育料の減額または免除が受けられる制度です。保育園・幼稚園の利用を支援します。 |
交通費割引制度 | JR通勤定期乗車券の割引制度です。通勤通学の費用を軽減します。 |
上下水道の減免制度 | 水道料金の減免が受けられる制度です。生活費の一部を補助します。 |
就学援助 | 給食費・学用品費などを援助する制度です。 |
市営自転車駐車場の利用料金免除 | 市営自転車駐車場利用料金の免除制度です。 |
市営住宅 | 母子世帯向け市営住宅の賃貸制度です。 |
所得税・住民税の免除・減免 | 所得税および住民税の減免措置です。家計の税負担を軽減します。 |
シングルマザーの実情は?
シングルマザーの実情について、父子家庭と比較しながら説明します。
母子家庭の平均年収と経済的現実
全国ひとり親世帯等調査(2021年度)によると、母子家庭の平均年収は以下の通りです。
平均年収
- 母子家庭の平均年間収入(母自身の収入):243万円
- 母子家庭の世帯全体の平均年間収入:348万円
母子家庭の平均年収は、一般の平均年収と比較してかなり低く、経済的に厳しい状況ということがわかるかと思います。
生活費の負担が大きく、教育費や医療費、住居費などの支出が家庭の経済を圧迫することが多いです。
また、母子家庭は非正規雇用やパートタイム労働が多く、就労時間や給与の制約から収入が増えにくい現実があります。
次に父子家庭の平均年収をみてみましょう。
父子家庭の平均年収と経済的現実
全国ひとり親世帯等調査(2021年度)によると、父子家庭の平均年収は以下の通りです。
平均年収
- 父子家庭の平均年間収入(父自身の収入):420万円
- 父子家庭の世帯全体の平均年間収入:573万円
父子家庭の平均年収は母子家庭と比較して高いですが、それでも経済的な課題があります。
特に一人親としての育児負担や家事の負担が大きく、就労時間の制約や仕事の選択肢が限られることがあります。
参考:全国ひとり親世帯等調査
母子家庭と父子家庭の現実の違い
母子家庭と父子家庭の現実の違いをざっとまとめました。
平均年収
- 母子家庭: 平均年間収入は243万円、世帯全体の平均年間収入は348万円。
- 父子家庭: 平均年間収入は420万円、世帯全体の平均年間収入は573万円。
経済的現実
- 母子家庭: 低収入により経済的に厳しい状況。特に教育費や生活費の負担が大きい。
- 父子家庭: 母子家庭より収入が高いが、育児や家事の負担が大きく、時間的な制約がある。
母子家庭は、父子家庭よりかなり低い収入ですね。
そのため収入が比較的不安定であり、住宅費のほかに食費、教育費など基本的な支出をカバーするには厳しい状況です。
一方、父子家庭は母子家庭よりも収入が高いです。
こういった統計から母子家庭が優先された支援制度であった事実はありますが、最近は母子、父子をひとくくりにした、ひとり親という形になりましたので、徐々にその差はなくなりつつあります。
ただ変わらないのは、手続きの複雑さと所得制限など厳しめに設定されているところですね。
十分な支援が行き届かないことが多いな、と感じます。
頼みの綱、養育費の現実
養育費は、シングルマザーにとって収入を補える頼みの綱ですが、
シングルマザーが直面する養育費の現実は非常に厳しいものです。
養育費は多くの場合、適切に支払われないことが多いのです。
厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、実際に養育費を受け取っているシングルマザーは約28.1%に過ぎません。
法的措置を取るにも時間と費用がかかりあきらめてしまっているケースも多いと聞きます。
このため、多くのシングルマザーが経済的に不安定な状況に陥りやすいです。
これがあれば少しは楽だったなと思っています。
まとめ
「シングルマザーは手当をもらいすぎでずるい」という意見がありますが、統計を見るとシングルマザーの現実は非常に厳しいです。
非正規雇用で養育費はほとんど続かず、経済的に不安定な状況。
そして、各種手当をフルに受給しても一般家庭の世帯年収には遠く及ばず、
生活や子育てに追われ、他のことにお金をかける余裕はありません。
そのため、シングルマザー見た目が残念とか、性格がきつそうとか、付き合いにくいとか、客観的に思われてしまう残念な面があります。
そうではないんです。
生活や子育てに追われて、今を生きるのに必死になっているだけです。
一方で、支援制度を利用していることに申し訳なさを感じることもあります。
あの時こうしていれば、今のような状況にならず、支援を受けることもなかったと。
なってしまったから仕方がない、今を受け入れるしかない、そして頑張っていく。
そんな彼女たちの支えになっている面があります。
どうぞ、シングルマザーの状況を理解していただけると幸いです。